はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第17章 札幌市の化学物質

人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質が、どこから、どれだけ排出されているかを知るとともに、化学物質の排出量や化学物質による環境リスクを減らすための制度の1つとして、PRTP制度が設けられています。

PRTP制度(化学物質排出移動量届出制度)は、この環境リスクを考える際にこれまで市民がほとんど目にすることのなかった化学物質の排出・移動に関する情報を、国が1年ごとに集計して公表する制度です。

1 環境省の取り組み

環境省は化学物質対策に関して、国民、事業者、行政、学識経験者等の様々な主体が参加した意見交換、合意形成の場として「化学物質と環境に関する政策対話」を設置し、その第1回会合を平成24年3月27日に公開で開催しました。

平成30年1月18日の第13回「化学物質と環境リスクに関する政策対話」の座長とりまとめに基づいて、環境省は「化学物質と環境リスクに関する理解力の向上とその取組に向けて」を発表しました。

この取り組みは、化学物質と環境リスクに関する理解力を身に付けることの重要性、地方公共団体の取組、事業者の取組、教育機関の取組、市民の取組、主体間連携の取組、将来に向けた視点などが網羅されているので、分かりやすく要約しました。

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 1-1 政策対話の指針

〇 化学物質と環境リスクに関する理解力を身に付けることの重要性

化学物質(天然由来のものを含む)はその様々な利便性により、私たちの生活になくてはならないものとなっています。しかしその固有の性質として有害性を持つものもあり、その取扱いや管理の方法によっては、大気、水、土壌、生物といった環境媒体を経由して人の健康や生態系への影響を及ぼすおそれ(環境リスク)が懸念されます。

化学物質の製造から流通、使用、そして廃棄に至るまで、化学物質のライフサイクル全体を捉えて、その利便性を享受しつつ環境リスクを適切に管理していくためには、化学物質の有用性やそれぞれの性状、役割とともに環境リスクを理解する力を身に付けることが極めて重要です。

まずは一人ひとりが化学物質と環境リスクの関わりを自らの課題として捉え、化学物質に関して興味・関心を持つことが、化学物質と環境リスクに関する理解力の底上げにつながるでしょう。

このためには、行政、事業者、教育機関等が「化学物質と環境リスクに関する理解力」を身に付ける機会を提供し、市民をはじめとする化学物質の利用者がその力を向上させることで、化学物質に関する基本的素養を高めることにより化学物質の選択や使用、廃棄の際に自ら環境リスクを適切に判断し低減するための行動につなげることが期待されます。

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〇 地方公共団体の取組

地方公共団体においては、有害ごみの分別や処理に関して市民向けに周知を行っていますが、地域の事業者や市民を対象に化学物質に関するセミナーを開催するなどの取組が実施されているところもあります。

大規模災害に備えた化学物質による環境リスクの低減等を事業者が検討・実施するにあたり地方自治体が対策事例集を作成している例や、大規模災害時の二次被害を防止して消防活動をより安全なものとするため、市町村消防部局に対して事業所で取り扱う化学物質の種類や量、危険性情報などを定期的に提供している事例もあります。

以上のような現状を踏まえて行政による今後の取組の方向性としては、社会情勢の変化や市民の関心に対応して最新の情報を反映したガイドブック等の内容の更新や、わかりやすさを常に追求していくことが望まれます。

また、有害性情報をはじめとするリスク評価に必要なデータベースや、評価手法の紹介等も含む環境リスク評価の事例集、環境リスク低減に向けた取組事例集等の拡充も必要です。

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〇 事業者の取組

事業者による今後の取組の方向性としては、経営者の理解のもとに、子供や市民を対象とした普及啓発や対話の継続的な実施、事例の共有、他の事業者・地域への展開が期待されます。

市民への情報提供の観点からは、サプライチェーンを通じた事業者同士での情報伝達が基盤となって、製品に含有される化学物質とその化学物質が使用される理由、取扱上の注意点等に関するわかりやすく入手しやすい情報の提供が望まれます。

化学物質を適切に管理しながら事業活動を行うためには、中小事業者においても自らが事業所のリスク評価を実施できるようになるための従業員のスキルアップも必要です。また、事業者における取組を推進していくためには、環境マネジメントシステム等への環境リスクの考え方の浸透を検討することも重要です。

さらに、事業者における今後の取組を推進するために、企業内外の専門家に求められるスキル・知識の在り方についても一層の検討が進められていくことが望まれます。

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〇 教育機関の取組

学校教育においても、化学物質と環境リスクに関する認識や理解力を身に付けていくことは重要です。同時に、化学物質の社会的役割や有用性を併せて取り上げることで、児童や生徒の化学物質に対する興味や関心を高めることにつながります。

海外(米国、英国、カナダ)では、小・中・高等学校の「理科(Science)」の教科の中で、化学物質の性質や取扱上の危険性、ラベル表示等の基礎的な理解の上で、社会的な問題や身近な商品の選択・取扱方法についての注意事項が取り上げられている例もあります。学年が上がるにつれて化学物質と環境問題との関係やその解決策を考えさせる教育がなされています。

以上のような現状を踏まえ、教育機関による今後の取組の方向性としては、海外の例も参考に、先に示した小・中・高等学校の学習指導要領に示す教育内容を実施するほか、教科等横断的な視点で児童生徒の発達段階に応じて学習内容について工夫することが期待されます。

また、化学物質に関心のある児童や生徒を十分な認識や理解力のある将来の実務者や生活者に育てる観点や、毒性学やリスク評価、リスクコミュニケーションの専門人材充実のために、社会人教育も含めて大学等の高等教育機関の教育体制及び内容を充実させる観点からも同様の検討が求められます。

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〇 市民の取組

市民には、化学物質と環境リスクに関する情報を理解するだけではなく、そのリスクへの対処法を主体的に判断し自らの生活で使用する化学物質を適切に取り扱い、健康への影響や環境負荷を意識して環境リスクを低減するための行動をとることが望まれまする。

まずは身近な製品等について化学物質に関するラベル表示や取扱説明書等にしたがって適切に利用することや、使用済の製品については地方自治体の指示に沿った分別を行うことより環境リスクの小さい製品の選択とそのためのコストの適切な負担が求められます。

行政や事業者、市民団体等が主催する環境学習の機会を通じて学ぶことに加え、市民自身が日々の生活の中で化学物質の環境リスクを判断し、行動することや、リスクコミュニケーション等の対話へとつなげていくことが望ましい。

各主体による市民向けの取組としては、地域レベルで実施されている環境学習の取組を紹介するイベントや、産業界主催による化学実験を体験できる子供向けのイベントなどがあります。

市民における今後の取組の方向性としては、市民としても主体者意識を持って化学物質の環境リスクに関する認識を高め、これを行動に移し、その結果や感想、他の主体への期待などをフィードバックしていくことが望まれます。

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〇 主体間連携の取組

行政や事業者、地域の市民団体が、環境に関する講座や体験型のワークショップなどを開催するなど、地域レベルでの取組が行われています。地域によっては環境学習センターなどがコーディネーターとなって、学校等の教育機関、行政、事業者、市民が連携し、市民や子供を対象とした取組が実施されている事例もあります。

このような取組は、化学物質に関する知識が日々の生活での実践や行動につながるような機会を提供する場として重要であり、こうした地域レベルでの取組を継続的に実施していくシステムが必要でする。

以上のような現状を踏まえ、主体間連携における今後の取組の方向性としては、事業者同士(例えば、化学物質の製造者と使用者)、事業者と市民など、互いの情報共有に対する期待や課題を相互にわかりやすく伝え合うことが重要です。

そして、地域における環境学習の場を活用した行政・事業者・教育機関・市民等の主体間連携を促す取組、地方公共団体や事業者の連携による化学物質をテーマにした市民向け講座の継続的な開催、社会人教育の充実など、様々な検討や取組が進められていくことが望ましい。

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〇 将来に向けた視点

新たな化学物質は今後も製造・利用されていき、化学物質に対する科学的知見も蓄積されていきます。こうした中で、化学物質と環境リスクに関する理解力が向上し、各主体が自ら判断・行動できるようになるために、将来にわたって各主体及び主体間連携による取組を継続的・発展的に実施していくことが重要です。

また、様々な主体・立場の一人ひとりが、自らの業務や生活で使用する化学物質を適切に取り扱い、健康への影響や環境負荷を意識して、環境リスクを低減するための行動を起こすための「動機づけ」も必要です。

そのため、化学物質と環境リスクに関する理解力の向上に向けた教育・人材育成の取組だけでなく、各自が行動するためのシステムを主体間連携により形成していくことが期待されます。

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 1-2 様々な世代・主体の参加

化学物質と環境リスクに関する理解力を身につける段階は、小・中学校といった義務教育、高等学校や専門学校、大学等の高等教育機関といった教育課程や事業所等でのOJT(オンザジョブ・トレーニング)、あるいは消費者教育や社会人教育など幅広いライフステージがあります。教育や研修の場以外にも、日々の暮らしや生活で化学物質に接する機会も多いのです。

また、化学物質と環境リスクに関する理解が社会の中で幅広く効果的に浸透するためには、各主体がその社会的役割に応じて行動することが求められます。なお、社会的役割の観点としては、例えば「事業者」の中には「経営者」と「労働者」の視点が含まれます。

また、「市民」の中には、化学物質を使用して製造された製品のエンドユーザーとしての「消費者」や、家庭や日常生活の中で児童に対して化学物質と環境リスクに関する理解を教育する立場としての「親・保護者」などの視点も含まれます。さらに、「行政」の中には化学物質に関する「専門部署」や「市民サービス」などの視点も含まれます。

上記の観点から、化学物質と環境リスクに関する理解力の向上に向けた基盤として、
  ・ 各主体間の情報共有を推進すること
  ・ 化学物質を適切に管理し活用していくための学校教育や社会人教育などを推
   進し、ライフステージに応じた人材育成を図ることが重要です。

加えて、情報共有の方法、社会的関心、わかりやすさにも配慮しつつ、法令の遵守だけでなく、国際的な動向も踏まえて、各主体が協力して次に示すような取組を進めることが必要です。同時に、化学物質の環境リスクに加え、その利便性や有用性についても情報共有が行なわれることが望ましいのです。

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 1-3 主体間連携による取組

化学物質と環境リスクに関する理解力の向上に向けて、行政、事業者、教育機関、市民等の各主体がそれぞれに取組を進めているほか、主体間の連携によって進められています。これらの取組を紹介するとともに、今後さらに期待される役割について以下に述べます。

国レベルでの行政の取組としては、関係省庁の参加のもと「化学物質と環境に関する政策対話」や、化学物質の安全管理に関するシンポジウムを開催しています。環境省では、化学物質のリスクコミュニケーションにおける理解の推進を担う人材として化学物質アドバイザーを派遣しています。

このほか、化学物質に関する市民・地方公共団体向けのガイドブックや、化学物質に関する情報を市民にもわかりやすく整理・簡潔にまとめた化学物質ファクトシートを提供しています。

経済産業省では、地方公共団体の職員を対象とした研修の中でリスクコミュニケーションの講義・演習を行うとともに、事業者が化学物質の管理において自主的にGHS(The Globally Harmonized System of Classification andLabelling of Chemicals : 化学品の分類および表示に関する世界調和システム)に対応したSDS(Safety Data Sheet : 安全データシート)を作成していけるよう講習会を実施しています。

また、製品に含有される化学物質を適正に管理し、種々の規制に合理的に対応していくために、サプライチェーン全体で利用可能な製品含有化学物質情報伝達スキーム(chemSHERPA)を開発し、各業界への普及を図っている。

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2 札幌市の化学物質排出量

平成28年度に届け出のあった札幌市内の排出量は(平成27年度把握分)の合計は、大気へ206トン、河川へ161トンとなっています。また、届け出が義務付けられていない事業所、家庭や自動車などの乗り物からも化学物質が排出されています。

化学物質は様々な目的で利用され、毎日の生活に欠かせないものになっています。しかし、便利さを提供してくれる半面、有害な性質も大なり小なり持っています。

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 2-1 届け出事業所の排出量

  2-1-1 大気へ排出量の多かった物質

化学物質名排出量 t/年主な排出源
トルエン   129出版・印刷・その他関連産業
ノルマルーヘキサン      29燃料小売業、ガソリン貯蔵タンク
キシレン      21各種の製造業
テトラクロロエチレン      10洗濯業
エチルベンゼン         5各種の製造業

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  2-1-2 河川へ排出量の多かった物質

化学物質名排出量 t/年主な排出源
ほう素化合物ン   127下水道処理施設
亜鉛の水溶性化合物      13下水道処理施設
マンガンとその化合物      11下水道処理施設、金属鉱業

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3 家庭から排出の化学物質

 3-1 大気と河川へ排出

家庭から大気や河川などへの排出量が第一位から第五位の科学物質。

化学物質名排出量 t/年主な排出源
ジクロロベンゼン   55衣料防虫剤
トルエン      17塗料、溶剤
キシレン      16塗料、溶剤
ポリ(オキシエチレン)
 アルキルエーテル(AE)
      120合成洗剤などの界面活性剤
HCFC-22         8冷房・冷凍庫熱罪

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 3-2 下水道への排出

家庭から下水道などへの排出量が多かった科学物質。

化学物質名下水道などへの移動量t/年市民一人当たりの排出量・移動量g/年主な排出源
ポリ(オキシエチレン)
 アルキルエーテル(AE)
     1,454              749合成洗剤などの界面活性剤
直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸・その塩(LAS)          615              317

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 3-3 乗り物からの排出

自動車などの乗り物からの排出量が第一位から第五位の科学物質。

化学物質名排出量 t/年主な排出源
トルエン       223ガソリンの成分
キシレン       138
ベンゼン          48
ノルマル・ヘキサン          42
エチルベンゼン          35

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4 排出量の多い化学物質

化学物質は、製造から廃棄されるまでの過程で、地球の環境に排出されています。大気の排出された化学物質は、風に乗って拡散します。化学物質排水の中のは、河川水で薄められ海に流れていきます。

トルエンやキシレンなどの炭素原子を持つ物質(有機化合物)の多くは、大気中に浮遊してしているときに光や水によって次第に無害な物質に分解されていきます。水中でも微生物などによって分解されます。

一方、テトラクロロエチレンなどのように、分解されにくい化学物質もあり、ほう素やふっ素などの無機物質は分解されません。

 4-1 トルエン、ノルマル、ヘキサン、キシ
   レン、ベンゼン、エチルベンゼン

石油などに含まれている揮発性のある物質で、様々な化学製品の原料として使われています。自動車やガソリンスタンド、塗料・インキなどの溶剤として使う工場などから排出されています。

 4-2 テトラクロロエチレン

揮発性のある物質で、ドライクリーニングの溶剤として選択業で使われています。

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 4-3 ジクロロベンゼン

揮発性のある物質で、衣類の防虫剤やトイレなどの防臭剤に含まれています。長期間吸い込むと、肝臓障害やガンのおそれもあります。また、シックハウス症候群の原因物質の1つと言われています。

 4-4 ポリ(オキシエチレン)=アルキルエー
   テル(AE)、直鎖型アルキルベンゼンス
   ルホン酸(LAS)

合成洗剤などの界面活性剤として使われています。下水道に排出され、ほとんどが下水処理施設で分解されます。大量に河川に流すと、水生生物に悪影響を及ぼす恐れがあります。

 4-5 ホルムアルデヒド

様々な合成樹脂の原料、接着剤や防腐剤に使用されます。有機物が燃焼した際に排出されるため、自動車の排気ガスやたばこの煙にも含まれています。大量に吸い込むと、鼻やのどの粘膜を刺激したり、皮膚炎の原因になることもあるため、乳幼児用の衣類などで含有量が規制されています。また、室内空気濃度の指針値が定められています。

 4-6 ほう素化合物

ガラスの原料であり、身近なものでは目薬や洗顔液にも含まれています。豊平川上流部で革底から湧き出して入りため、水道水にもわずかに含まれており、下水道を経て河川に排出されています。

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 4-7 亜鉛の水溶性化合物

メッキ加工の材料、マンガン乾電池の電解液やレーヨンの製造に使用されます。ほとんどが出水道を経て河川に排出されています。

 4-8 マンガンとその化合物

フロン系の一種。ビルの空調機器などの冷房や断熱材などの発泡剤などとして使用されてきました。オゾン層破壊物質としてすでに生産が禁止されています。

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5 排出量の削減へ向け

 5-1 札幌市の取り組み

札幌市ではPRTP制度をさらに充実させるため、「札幌市生活環境の確保に関する条例」に基づき、国の法律の対象よりも規模の小さな事業所も対象に加えて、「市内での使用頻度が高い化学物質を対象に取り扱いの届出」や「適正管理のための科学物質自主管理マニュアルの作成・提出」を義務付けています。

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 5-2 届出対象の化学物質

国の法律では462物質ですが札幌市は69物質です。国の法律で化学物質の取扱量は千kg以上で全従業員数は21人以上ですが、札幌市の条例で化学物質の取扱量は百kg以上で全従業員数は10人以上が届出事業者の要件となっています。

届出内容は、国の法律では排出量と移動量ですが、札幌市の条例では排出量と移動量に加え、取扱量(使用料、製造量、製品としての出荷量)も含まれています。札幌市は、市内にある全事業所の全従業員が21人以上の事業所にも、化学物質自主管理マニュアルの作成と提出を義務付けています。

マニュアルの内容は、化学物質をどの工程でどのように取り扱うのか、排出防止の設備等をどのように保守管理するのか、化学物質をどのように保管管理するのか、排出量などをどのように把握するのかなどです。

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 5-3 環境中の化学物質の測定

化学物質には急性の毒性を持つものだけでなく、低濃度でも長い期間吸い続けるなどの体の中に取り組んでいると、人の健康に影響を及ぼすおそれのあるものがあります。

そこで札幌市は、ガソリンに含まれるベンゼンやドライクリーニングに使用されるテトラクロロエチレン、ごみを燃やしたさいに発生しやすいダイオキシン類などの物質を対象に、大気、河川水、地下水などの中の濃度を継続して調査しています。

札幌市は、平成28年度に大気は4地点で、河川は26地点で、地下水は112地点で調査を行いました。測定結果の詳しいデーターは、次の「環境保全のページ」に掲載されています。

有害大気汚染物質  ダイオキシン類  河川水質測定結果  地下水質の現況

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 5-4 事業者への指導

〇 立ち入り検査 
    札幌市では、特定の化学物質を製造・使用・保管している事業所を対象に施設へ
   立ち入り、基準等を守っているかどうかをチェックし、不備事項を改善させていま
   す。

〇 自主測定の確認 
    事業者に、工場棟からの排ガスや排出水の化学物質濃度を測定してもらい、その
   結果の報告を受けたり、立ち入り検査のさいに確認しています。

〇 化学物質の排出削減の自主的な取り組みの推進 
    化学物質の環境への排出量を効果的に減らしていくためには、排出基準などを守
   るだけでなく、事業者自身による自主的な取り組みが必要です。
    札幌市では、事業者に対して化学物質自主管理マニュアルの作成を求めており、
   また立入検査や届出を受ける機会をなどを捉えて、自主的な取り組みを要請してい
   ます。

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6 札幌市民の努力

 6-1 生活の中でできること

事業活動だけでなく、日常生活の中でも私たちは化学物質を排出しています。化学物質について意識することは、環境を守ること、ムダをなくすことにもつながります。

〇 買うときは 
  ・ 本当に必要かどうか考えて、購入しましょう。
  ・  環境や健康に配慮したものを選びましょう。

〇 使うときは 
  ・ 製品の表示を読み、用途や使用料など正しく使いましょう。
  ・ 灯油を漏らさないようにホームタンクや配管をしっかり管理しましょう。
  ・ 香りのある柔軟仕上げ剤などを使うときは、過度にならないようにしましょう。
   自分にとっては快適なにおいでも、他の人は不快に感じることがあります。

〇 捨てるときは 
  ・ 使い終わったら、ラベルや説明書に書かれている方法や、札幌市のルールを守っ
   て廃棄しましょう。

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 6-2 札幌市のゴミ出しルール

〇 スプレー缶・カセットボンベ(整髪料、殺虫剤、卓上ボンベ等) 
  ・ 中身を使い切り、穴を開けずに半透明の袋(無料)の別袋を入れ、燃やせるごみ
   と同じ収集日に出してください。

〇 筒型乾電池 
  ・ 透明または半透明の別袋に入れて、燃やせないゴミ(無料)と同じ収集日に出し
   てください。
  ・ 小型の充電式電池(CR形式、BR形式)は、セロハンテープなどにくるんで、
   燃やせないごみ(これは有料です)として出してください。

〇 市で収集処理できないもの 
  ・ 農薬などの化学薬品。
  ・ 廃油や塗料の入っている容器。
  ・ 販売店や専門の取扱業者にご相談ください。

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 6-3 日常の注意事項

〇 トイレでの注意 
  ・ トイレットペーパー以外の水に溶けない紙、ごみ、油は下水道に流さないでくだ
   さい。下水道管がつまり、下水処理にも支障をきたしてます。

〇 雨水マス 
  ・ 道路の雨水マも下水道に接続されていますので、ごみや油などを流さないでくだ
   さい。また、地域によっては、そのまま川に流れ出てしまいます。

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7 揮発性有機化合物の排出削減

 7-1 化学物質アドバイザー

化学物質アドバイザーは、化学物質に関する専門的知識や、化学物質について的確に説明する能力等を有する人材を登録し、派遣等を行う環境省の事業のひとつです。

化学物質アドバイザーは、
 ・ 化学物質の物性・有害性と人や環境への影響
 ・ 化学物質全般に関する最新の知見
 ・ 化管法をはじめとする化学物質関連法規
 ・ リスクの考え方・リスクの評価
 ・ リスクコミュニケーションの考え方・手法
等の知識を身に付けている方々で、リスクコミュニケーションの推進をお手伝いして下さいますが、営利を目的とした活動ではありません。中立的な立場から、化学物質についてわかりやすく解説したり、アドバイスすることを目的としています。

化学物質アドバイザーの役割は、
 〇 講演会や勉強会の講師を務める
  ・ 行政主催の「化学物質に関する市民向けシンポジュウム」等
  ・ 行政主催の「事業者向けPRTR説明会」
  ・ 企業の社内向け研修会
  ・ 市民グループの勉強会
 〇 リスクコミュニュケーションの場の解説者
  ・ 企業と市民の意見交換・情報共有に基づく相互理解の場に、解説者として参加。

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 7-2 揮発性有機化合物とは

塗料(溶剤や希釈剤を含む)、印刷インキ、洗浄剤、ガソリン、シンナー、接着剤等に含まれる「トルエン」「キシレン」などが代表的な化学物質名になります。

〇 トルエン
  様々な化学物質の原料で、油性塗料や接着剤等の溶剤になります。2010年度の排
 出量は11万トンで、化学物質排出移動量対象物質中では最多になってます。事業所か
 らや、車の排気ガスに含まれてい排出されます。

〇 キシレン
  他の化学物質の原料で、油性塗料や接着剤等の溶剤になります。2010年度の排出
 量は77千トンで、化学物質排出移動量対象物質中では第二位に位置します。事業所か
 らや塗料や接着剤を使用する土木・建築工事現場、車の排気ガスに含まれてい排出され
 ます。

〇 酢酸エチル
  塗料、印刷インキ、接着剤、衣料品の原料になります。20015年度の事業所から
 の排出量は約10万トンです。

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 7-3 化学物質による影響

〇 化学物質の大気汚染

光化学スモッグや浮遊粒子状物質による健康への影響が懸念されます。浮遊粒子状物質や光化学オキシダントの原因には様々なものがありますが、化学物質もその一つになっています。現在も、光化学オキシダントによる健康被害が数多く届け出され、緊急に対処することが必要になっています。

〇  化学物質の健康被害

主な有機溶剤中毒の症状と原因物質(中央労働災害防止協会の資料)

毒性疾患・症状有機溶剤
共通中枢神経系頭痛、めまい、意識障害ほとんどの有機溶剤
皮膚粘膜刺激皮膚炎、角化、亀裂ほとんどの有機溶剤
造血器障害貧血ベンゼン
肝障害管実質障害塩化炭化水素類
腎障害蛋白尿、腎硬化症塩化炭化水素類
末梢神経障害多発性神経炎ノルマンヘキサン、メチルブチルケトン、二酸化炭素
視神経障害資料低下、失明メタノール、酢酸メチル
血管障害網膜細動脈瘤二硫化炭素
生殖毒性精子減少、無月経2-ブロモブロバン
発がん性トリクロルエチレン、NN-ジメチルホルムアヒド
精神障害意識障害、精神異常二硫化炭素

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 7-4 化学物資の排出量

平成22年度までに大気汚染防止法による排出規制と、事業者が自主的に行う排出抑制の取り組みで、平成12年度の排出量を基準として3割程度削減を目標としました。

化学物資の排出量を削減することでメリットが生まれます。
 〇 大気環境改善への貢献
 〇 作業環境の改善
 〇 溶剤保管場所の削減
 〇 化学物質の適正管理
 〇 塗料や溶剤の使用量・排出量の削減
  ・ 作業方法の最適化
  ・ 改修して売却あるいはリサイクル
  ・ 原材料費や廃棄物(廃液)処理費等のコスト削減

主に、間接的なメリットは
 〇 企業のイメージアップ
 〇 説教く定期名環境対策をアピール
  ・ 地域社会との共存
 〇 最適な作業条件の教育を通じ、整理整頓なども推進されて全体的な作業の効率アッ
  プにつながる。

都道府県別の全化学物質の合計排出量は、
 ① 愛知県    26,150トン/年
 ② 東京都    20,040トン/年
 ③ 埼玉県    18,771トン/年
 ④ 神奈川県   18,035トン/年
 ⑤ 千葉県    17,674トン/年、静岡県、大阪府、兵庫県、茨城県
 ⑪ 北海道    15,459トン/年、福岡県、群馬県、岐阜県

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北海道における排出物質と排出量

① キシレン      届出 494トン/年  届出外 3,300トン/年
 ② トルエン      届出 689トン/年  届出外 1,932トン/年
 ③ エチルベンゼン   届出 277トン/年  届出外   581トン/年
 ④ ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル
             届出   0トン/年  届出外   833トン/年
 ⑤ HCFC-22        0トン/年  届出外   560トン/年
 ⑥ マンコゼブ     届出   0トン/年  届出外   511トン/年
 ⑦ 直鎖アルキルベンゼンスルホンさん及びその塩
             届出   0トン/年  届出外   507トン/年
 ⑧ ベンゼ       届出  57トン/年  届出外   430トン/年

 ⑨ マンガン及びその化合物
             届出   0トン/年  届出外    48トン/年
 ⑧ ホルムアルデヒド  届出   3トン/年  届出外   354トン/年

届出外が多いというのは、自動車等の排気ガスが多い性と思われます。マンコゼブは、果樹や野菜、花木などの病害予防用殺虫剤です。マンガン及びその化合物は、合金の原料で、鉄鋼製品製造の添加剤として利用されます。

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 7-5 今後の取り組み

  7-5-1 制度の継続

〇 新たな削減目標は設定せず、現行揮発性有機化合物排出制度を継続することが適当
  (中央県境審議会平成24年12月)

〇 自主的取組に参加している業界団体等ごとに目指すべき方向性と方策を提示し、毎
  年度報告するとともに取組内容を共有することで、自主的取組の更なる充実を図ると
  ともに当該取組が有効に行われることを示す(産業構造審議会産業観光リスク対策合
  同WGー平成25年4月)

  3-5-2 自主的取り組みの充実

〇 自主的取り組みをさらに充実させていくため、できるだけ多くの企業が参加してい
  くことが必要(産業構造審議会産業観光リスク対策合同WG-平成25年4月)

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 7-6 自主的取り組みの支援制度

  7-6-1 中小企業支援制度

 〇 日本政策金融公庫(中小企業事業、国民生活事業)

  7-6-2 中小企業でも導入可能な処理装置など
     の検討

 〇 環境省、東京都:VOV脱臭処理装置技術評価事業

 〇 環境技術実証モデル事業ージクロメタン処理技術分野(環境省ー東京都)

 〇 NEDO:有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発(平成16~20年度)

  7-6-3 社団法人産業環境管理協会の自主的取
     組支援ボード

 〇 業界団体等に所属していない企業の自主的取組をとりまとめる。

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環境省の「化学物質と環境リスクに関する理解力の向上とその取組に向けて」、札幌市環境局発行の「知ってください札幌市の化学物質」、化学物質アドバイザー寺沢弘子氏の化学物質管理セミナー資料などを参考にしました。ありがとうございます。